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鯛の鳴門骨(なるとほね)は、主にマダイでごく稀に持つ個体がいる「こぶ」のように盛り上がった骨のこと。
尾びれの周辺の骨の一部が丸く盛り上がっていて、3枚おろしをするとすぐに分かります。
名前の由来は、激流渦巻く「鳴門海峡」で漁獲されたマダイによくみられる骨の特徴であったため。
これは奇形や病気によるものではなく、マダイの生息する環境によって成長過程で形成されるもの。50センチを超えるような大型のマダイで確認しやすく、小型の個体では鳴門骨を形成するまでに至らないことが多いです。
具体的にどういった理論で鳴門骨ができるのかは諸説あり、
- 激流を泳ぐうちに骨が骨折して再生されていく過程で太くなる
- 何らかの負荷がかかって人間でいう「剣だこ」のようなもの
どういう条件で育てばできるかは明確なものが分かっていないと言います。
ただはっきりしているのは、天然ものに見られるもので、養殖マダイや静かな湾内で育つマダイには見られないという点。
激流を泳ぎ生き抜いてきた、マダイの中でも精鋭個体。天然マダイの中でも限られた環境を生きた者のみが持つ勲章ともいえるのが鳴門骨です。
鳴門骨を持つタイは捌きにくいけど絶品
釣ってきたマダイを捌いていたときに、妙に包丁の通りが悪い個体がいることに気づきました。
鳴門骨を持つタイはこぶが包丁に当たるため、きれいに中骨まで到達せずに捌くのが難しいのです。
これはもしやと思い開いていくと、小さいながらも正真正銘の鳴門骨ができているではありませんか。
鳴門骨は鳴門海峡で育ったマダイにしかできないものではなく、全国各地で保有する個体が上がっているようです。似たような激流を生きてきた個体であれば、鳴門骨を持っている可能性があります。
このマダイは三重の漁港のカゴ釣りで上げたものですが、身には弾力があって養殖ものとは一線を画す品の良い脂の乗りで絶品でした。
刺身で食べれば醤油など何もつけなくても甘みが広がる。煮てもしゃぶしゃぶでも絶品級の味を堪能することができました。
鳴門骨を手に入れるのは極めて難しい
「私も鳴門骨を生で見てみたい!」と思っても非常に難しいです。外目には分からないので、捌いてみないと鳴門骨があるかどうかはっきりわかりません。
さらに、高価な天然ものは料亭などに卸されるため、一般にスーパーなどで買える養殖マダイで鳴門骨に出会う確率は極めてゼロに近いのです。
釣り人ととして天然のマダイを釣るならば可能性は高まります。それでも鳴門骨ができている個体が釣れるのは本当に運任せ。
たかが魚の骨と言え貴重なものであり、わざわざコレクションしている人もいるとか。私もつい舞い上がって食べた後の骨を乾燥させて保管してしまいました。
こうした自然が引き起こす珍事を目の当たりにでき、釣った後の過程も楽しむというのは釣りの醍醐味でもありますね。
もしマダイを釣って鳴門骨持ってる個体を見つけたら、食味には期待して1ミリの身も残さずしゃぶりつくしてみてください。