磯竿というと、本来グレ釣りのために作られたと言っても過言ではない釣り竿。筋肉質な魚体で海中を暴れまわる魚をコントロールして、根に潜られないように釣り上げるパワーを兼ね備えています。
一方で同じような磯竿でも、チヌ(クロダイ)専用竿として作られている磯竿もあります。フカセ釣りでチヌを釣るのであれば、やっぱりチヌ専用の竿の方が良いのか?と悩む部分もあるため、大まかな設計の違いなどをまとめています。
チヌ専用竿の決定的違いは「調子」の違い
チヌの専用竿は端的にいうと非常によくしなって曲がる胴調子になっているということ。
胴調子とは、魚がかかった時に曲がるときの支点が竿の中央寄りの部分にかかり、大きな弧を描くように曲がる竿。非常に柔らかくて弾力に飛んでいて、小さな魚が釣れても大げさなくらいに曲がる。
5:5とか、6:4という表記がされており、より手元に近い部分からグッと曲がります。
一方グレ竿も繊細でよく曲がる竿なのですが、一般には3:7など先調子になっているものが多いです。竿の先端よりに曲がるため、やや硬い印象を受けます。
この調子の違いは、魚がかかった時の扱いに大きな差をもたらします。
調子が違うと竿さばきに違いが出る
しなって円を描くように曲がるチヌ竿の利点は、竿の弾力が魚の引きを打ち消して、じわじわと弱らせて海面に浮かばせることができること。じっと引きを耐えているだけで、大型の魚も暴れさせることなく浮かせられます。
一方でデメリットは、竿が大きく曲がると、竿を動かしてコントロールするのが難しい。魚が右へ左へと暴れる場合は竿さばきにテクニックが必要で、いいように魚にあしらわれてしまうこともあるのです。
こうした魚とのやり取りの質の違いに、チヌ専用竿たる設計の要点が詰まっています。
チヌとグレの習性の違いによる釣りやすさ
チヌ専用という竿がわざわざ作られているのは、チヌはあまり暴れまわる魚ではないため。基本的にハリ掛かりした瞬間は重量感ある引きをしますが、すぐにスタミナ切れして首を振っていやいやをするような動きに変わります。
元気なやつもいますが、岩の隙間に突っ込んでいくような性質もないので、下手に刺激せずに竿の弾力で溜めて弱らせる方が釣り上げやすいのです。
グレの場合は小型でもパワーがあり、タモ入れ寸前まで気を抜けないほど最後の最後まで抵抗します。磯の岩場やテトラを寝床にしているためか、ハリが掛かりすると猛烈に根に突っ込んでいきます。
さらに足場の悪い磯場での釣りが多いため、取り込みやすい場所へ誘導するなど、竿をコントロールして魚を泳がせるテクニックも必要になります。実際40センチ超えるサイズのグレがかかると、引きは相当なもので弱るのを待っていられません。
こうした魚の習性の違いによっても、掛かった時の取り扱いのしやすさが竿の性質にでてくるのです。
チヌ専用竿 | グレ竿(一般的磯竿) | |
調子 | 胴調子・元調子 | 先調子 |
特徴 | 魚をの引きを弾力でいなして浮かせる | 魚の動きをコントロールして取り込む |
欠点 | 暴れまわる魚相手だと竿がのされやすい | パワーがありすぎて釣趣に欠ける面もある |
いきなりチヌ専用竿に手を出す必要はないと思う
結局のところチヌ専用とは言いつつも、この竿でなければチヌ釣りが難しくなるとか釣れないというものでもありません。一般的なグレ釣り用の磯竿であっても、問題なくチヌは釣れるものです。
重視すべきは「釣趣」という部分につきます。グレ用の1.5号などの竿でチヌをかけると、あっさりするほど釣り上がってしまって面白みに欠ける部分もあります。パワーがある竿だと、あまり走り回らないチヌに対して竿のパワーを生かし切れず持て余してしまう部分もあるわけです。
チヌ竿の胴調子であれば、竿を弧の字にグーンとまげて溜め、チヌをじっくり弱らせてやり取りしつつ浮かせるという独特の面白さがあるわけです。このチヌをかけたときに発揮される醍醐味を味わうためにチヌ専用竿を選ぶという選択は十分にありだと思います。
個人的にはストイックなグレ釣りよりもチヌの方が釣り上げたときの満足感があるため、どうしてもチヌタックルにはこだわってしまいますが、この面白さにのめり込んだ段階にまで行ってようやくチヌ専用竿の面白さをかみしめられるのではないかと思っています。